冬の夜の刹那

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信号で止まり、ふとつぶやいた言葉が夜の暗闇に静かに消えた。 伝えないまま終わった恋。失恋。 同じ部活の原本君を体験入部の時に、一目惚れしてからずっと好きだった。 陸上経験者の中でも一番抜きん出ていて、大会ではいつも入賞していた。 今まで短距離をしていた私が、苦手な長距離に種目を変えたのも、きっと原本君に少しでも近づきたいと思ったから。 練習でも大会でも、いつも私の走りに的確なアドバイスをしてくれて、「塚間、めっちゃ速なったよなぁ」って言ってニカッと笑う原本君の笑顔が大好きやった。 みんなに優しい人だったから、だから誰のもんでもないと勝手に思っとった。 あわよくば自分のものになったらなぁ・・・とも。 気持ちに整理はついとるように装っている自分は、はたして失恋というものを知っているのだろうか、・・・分からない。 信号が青に変わり、横に止まっていた自転車が次々と動き出す。 それでも私は止まっていた。 分からない、目から涙があふれてくる理由が分からない。 分からない、分からない・・・・・・これが失恋だ。
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