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冬の夜の刹那
それはほんまに突然のことやった。
雪音から放たれた言葉が、私の心臓の奥深くをひと突きし、通り過ぎて行った。
一瞬何のことか分からなくてあっけらかんとした顔のまま「へぇ~、そうなんや、知らんかったわ」と口がものを発していく。
「原本君、ずっと彼女おらんって言よったんやけどな、うちらと恋バナしよる時にめっちゃ問い詰めたら、ほんまはおるって白状してくれて・・・」
「その彼女って誰なん?」
雪音の声に覆いかぶさるように発した私の言葉はかすかに震えていた。
きっと雪音は気づいていない、私がひどく動揺していることなど。
「うんー、教えてくれんかったんよなぁ。でも東高校の子やろなぁ。原本君と仲良い男子に聞いたら分かるんかなぁ・・・」
私は感情を停止させたまま雪音の話を無理やり脳に流し込んだ。
今の私は嬉しさも、楽しさも、苦しさも、もちろん悲しさも全く感じない人間の殻だけの状態だ。
それはそれで反対に強いのかもしれない。私は最強だ。
「やっぱ東高やろなぁ、分かった聞いてみよや~」
・・・聞けるわけないし、そんなこと絶対出来んわ。
口と心は矛盾していて、本当の自分は今ここにいない。
「じゃあね、バイバイ~」
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