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分かれ道にさしかかり、私は雪音に端々とした別れの言葉を告げた。
グッと自転車のペダルに力を入れる。ギアを一番重くしているため、出だしはふらふらしながらゆっくりと進んでいく。
ああ、そうなんか。原本君彼女おったんや。全然分からんかった。
そりゃあ、あんなにおもしろくて、優しくて、顔もまぁまぁ良くて、運動もできる人に彼女がおらんわけないよな。
だんだんとスピードが上がり始めた自転車は、冬の夜のひんやりとした空気をビュンビュンと切っていく。
私みたいな人生の負け組は恋なんか叶うわけないよな。
ほんまに調子に乗っとった自分がバカみたい。
現実を知れ・・・バカ野郎!
ちょっと優しくされとったからって、からって・・・って・・・
いつのまにか自転車をこぐ速さはトップスピードまで達していた。
ごちゃごちゃに絡み合う感情を必死に受け止めながら、がむしゃらにがむしゃらにこいでいた。
立ちこぎになって、ペダルを回せばまわすほど自転車は前に進む。
前を歩いていた人は、次々に私の自転車の勢いに飲み込まれ、視界から消えていった。
事故るかも、いや、今の私に事故っていうものは分からない。
どこか遠くのものに感じる。
人間の日常的な世界は、大会で走る3kmよりもきっと遠い。
「そうか、彼女・・・おったんか」
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