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「孝文君、――あの……、好き。好き、です。あの、あたし……」
先月の飲み会で知り合った子。
聞いた話では今まで男は何人もいたようだし経験も豊富だろう。面倒臭くないタイプだと良いな。
ふわふわとした柔らかい雰囲気の、天然系に見える所謂庇護欲をそそられるタイプ。この顔なら間違いないなくモテるだろう。スタイルも良い。
それでも今までは自分から積極的にならなくても男が寄ってくる中から選んで付き合ってきたのだろうか。ぎこちない告白はだが決して演じているように見えず、耳まで紅く染め、前髪を編み込みで上げているせいで晒された額にはじんわりと汗を滲ませている。明らかに緊張している様子だ。握り締めた手が微かに震えている。
「うん、ありがとう。よろしくね、高瀬さん」
ぱあっと表情を輝かせて、今にも泣きそうな潤んだ瞳で俺を見上げた高瀬美波。希望に満ち溢れた笑顔。
可愛い。確かに……可愛い。それは解るのに、本心では酷く冷めている自分自身がよく解らないのも、いつものこと。
恋をする女の子は可愛いと、確かに思う。相手の為に時間を惜しむことなく自分を磨き、相手の一言に一喜一憂する。そんな純真さは確かに愛おしいものだ。
今まで俺に愛を求める女の子達は途切れたことがない。特別自分が魅力的な人間であるとは思えないし、同級の友人達のほうが余程人間らしくて魅力的に映る。だからこそ不思議だった。皆俺の何を見てそんなに愛だの恋だの叫べるんだろうと、告白を承諾しながらもそう思って生きてきた。
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