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曲が変わった。ステージの上で、ボーカルが飛び上がっている。
「それじゃ、リクエストに応えていくぜ! Let's go , Twist & Shout!」
思いもかけぬ曲名が告げられた。ステージに体を向けた少年の目に、ホール中央で膝を落として体を左右に振り振りする若者たちが目に入った。
“あれが、Twistと呼ばれる踊りなんだ”
♪ バンバン、ババババンバンバババ、バババジャーン!
♪ ヴィー、ヴィヴィヴィー、ティーピーヴィピーティーン!
♪ チャキチャキ、チャチャチャキー!
♪ ブンブン、ボンボンブンボンブンボン、ブブブ、ボボボン!
髪を振り乱しての女がいて、くわえタバコに目をしかめる男がいる。
シャツの袖口が青白く光り、激しく左右に動いている。
落下傘スカートの裾をなびかせる女がいれば、皆がしゃがみこむ中で躊躇しているミニスカートの女がいる。
二階のボックス席を宛がわれた少年は、彼らの踊りを見下ろしていた。幾分神経も慣れ始め、耳も騒音と感じなくなっていた。しかし、思い描いた世界との落差に失望して、ここに足を踏み入れた理由を忘れてしまった。
少年の上げた手に気付いた黒服が、コーラの注文を受け付けた。ここには階下の光の洪水はない。音も階下に比べられば、抑えられている。この階上は踊り疲れた者たちの休憩場所としての役目を帯びているようだ。
そしてもう一つ、メイクラブの場としての役目があるようだ。あちこちの席に、ひそひそ声がある。重なり合う頭もある。カウンターに陣取っていた彼を、なぜこの場に移したのか、少年は戸惑うばかりだ。
キョロキョロと辺りを窺うわけにもいかないが、気になり始めると目が右に左にと激しく動き回る。そして、奇異な二人連れを発見した。ステージ近くのボックスに、女二人が陣取っている。時折黒服が近寄っては、話に興じている。どうやら常連客らしく、時折嬌声を上げたりしている。一人が常連らしく、もう一人は俯いていることが多い。
時折頷いてはいるが、興に乗っているわけではないようだ。
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