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「考彦が所持していた銃弾を火種にしたのさ。あの倉庫ともいえる場所には、片づけるのに、よほど慌てていたんだろうな‥‥回収し損ねた無数の銃弾が散らばっていた。中にはライフル銃の弾丸も含まれていたようでね。それを数か所、壁の急所となり得るだろう隙間にナイフで押し込み、そこを狙って孝彦が数発の銃弾を撃ち放ったのさ。」
「あの短時間で、よくそんな事が出来たわね。」
微かなため息ざまに、亜紀が笑う。
「まさか…15分以上は時間を要してるはずだ。あのまま、迷路を戻っていたら、散々惑わされて一向に君の元へたどり着く事は不可能だったはず。たどり着いた頃には、君の命もきっと…。」
「えっ?そんなに時間がたっていたなんて…。」
まるで夢か幻の世界を漂っていた、そんな風にしか瑠依には思えない。
「実は…考彦の父親は、世界でトップを争う程の射撃の名手だったんだ。あいつの射撃の腕も去る事ながら、幼い頃からすでに銃器の扱いを徹底的に叩き込まれてる。銃弾火薬の威力から、破壊知識まで‥‥弾薬の応用なら、奴にとってはたやすい事。」
そんな二人の目の前に、遅ればせながらも別荘の中からようやく考彦が姿を見せた。
武器製造に使われていた部屋を隈無く探し回っていたのか、着ていたスーツが見事、土まみれだ。
「思っていた通り、これは恐らくエリア・ウエポンの部品だ。」
差し出された考彦の手の平に、瑠依にとっては理解しがたい小さな部品が2、3個のせられている。
「何?エリア・ウエポンって?」
聞き慣れない言葉に、手にした部品を握り締める考彦の視線が瑠依へと向き直った。
「マシンガンの事だ。残されていた部品のピン、ナットを見る限りではM16A2ライフルをベースにした最も新しい改造銃に違いない。」
過去ベトナム戦争にも使用された銃で、高速で軽量弾、リコイル(反動)も軽く、GUN重量も約3.5Kg程度と、軍用銃としては手頃なM16ライフル。
そこからバージョンアップした、M16A2ライフル。
それを基本とした、全く新しい改良型の銃が密かに造られていたようだ。
「M16ライフルは元々、作動メカに多数の問題があった銃だったが、改良に改良を重ね、そこから発展した数多くのバリエーションは数知れず‥‥。ただ、アメリカの陸軍と海兵隊が以前採用していたのは、M16A4アサルトライフルだ。」
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