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硝煙の陽炎
格安航空会社特有の雑な着陸だった。狭いエコノミークラスの安っぽい座席を。タイヤから伝わる振動が揺さぶった。
北京首都国際空港に降り立った後藤鋭一と篠崎美智子は手早く入国手続きを済ませていく。この空港はハブ空港のくせに、メンテナンスが行き届いていない。美智子は思う。電光掲示板のLEDが切れていたり、掃除が雑だったり――この辺りは新興国なら仕方ないか、と自分を納得させた。
「乗り心地の悪い飛行機だった」
「そうですね」
鋭一は極道特有の着崩したスーツスタイルに引き締まった肉体が特徴的な男だ。空手、日本拳法、剣道有段者のその肉体は絞り上げたワイヤーロープのように無駄がない。今は武装していないが、銃もかなり使いこなす。
今日の美智子はパンツスーツスタイルに身を包んでいた。銃を隠せるように、黒のジャケットも着用している。
「とりあえず、武器を用意する」
二人は空港の立体駐車場に向かう。組織の人間は商談の関係で頻繁に中国を訪れるから、組が保有する車が置いてあった。
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