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「去年の私の誕生日に、ホテルでパーティーを開いてくれたんですよ。友達も近所の方も、あの人の仕事でお世話になってる方も大勢招いて。あの人は人を喜ばせることが好きでね、プロポーズも盛大で……そういうところがあるからいつも許しちゃって」
サツキさんは窓の外を見ながらクスクスと小さく笑った。彼女の気持ちは痛いほどわかっていた。結局こっちが傷ついてしまうのに絆されて続けていく関係。もう過ぎたこと、立ち直ったと思っていたが彼との記憶が次々と溢れ出る。
胸が詰まり何も言えず、私はうんうんと頷きながら聞くので精一杯だった。
「パーティーが終わった後、私は真っ直ぐ家に帰ったんです。何にも知らないで」
サツキさんの声がぐっと低くなる。寂しげな顔は険しい表情に変わった。あまりの変化に私は狼狽え、息を呑んだ。
「あの人ね、パーティーが終わった後、私の友達や仕事仲間とみんなでどんちゃん騒ぎをして、浮気したんです」
「そんな、酷い……」
思わず口から飛び出た言葉に嘘偽りはなかった。サツキさんの誕生日パーティーだったというのになんて仕打ちだろう。酷すぎる。
「知らないのは主役を気取って浮かれていた私だけ。みんなグルで、私がいい気になって帰るのを待っていたの。馬鹿みたい。あれはただの出会いの場でしかなかった。私のことなんてみんなどうでも良かったのよ」
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