二月十四日

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 サツキさんの横顔からは孕んだ怒りが滲み出ている。私の知らない大人の世界が彼女の周りには広がっていたのだ。  サツキさんは切々と語った。他の友達から巡り巡ってパーティーから三ヶ月後にようやくこの話を聞いたこと。すぐにご主人に問い詰めたがいつものように悪びれもなく話を切り上げ仕事に行ってしまったこと。  サツキさんの衝撃的な告白。まるでドラマでも観ているかのようだった。旅の途中、初めて会った人の生き様に触れ、私はただただ困惑し同情していた。 「ようやく許せないって思ったんです。この十年間を振り返ると心の底から吐き気がして、あの人の使った食器さえ反吐が出そうなくらい憎くて憎くて。不貞の証拠を集めて離婚してやろうって決意したの」  窓の外ではちらほらと雪が降り始めていた。予報では晴れると出ていたが、県境を過ぎてから空は厚い雪雲に覆われていた。この路線が山に近い場所だからだろうか。すぐに止むだろうか。 「今まで私が何も言わなかった分、あの人は浮気を隠そうともしなくなっていたから、証拠は簡単に集まった。私が証拠を集めてるだなんて気付かないで、あの人は毎日毎日浮気を繰り返して……ああ気持ち悪い、今でも寒気がするわ」     
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