二月十四日

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二月十四日

 二月十四日、私はローカル線に乗ってささやかな一人旅を楽しんでいた。  行き先は二つ隣の県。正直何処でも良かった。一か月前の今日、猛烈に旅に出たくなったのだ。思い立ったが吉日、私はちょうど一月後にあたる今日この日に格安の温泉宿に予約を入れて、バイト先に休み希望を出した。  そして冷静になった頃気付いた。旅行の日はちょうどバレンタインであるということに。  窓の向こうには冬晴れの青々とした空と雪を被り白くなった山々。今年は暖冬のため雪が少ないと聞いた。確かにそのようだった。雪化粧を施しているのは山ばかりで、線路の伸びる先にも周りにも白は見当たらない。  若い女の一人旅がしんしんと降り積もる雪の中であったら寂しくてたまらないだろうし、何より雪があれば移動が困難になる。これはこれで良かったのだと思うことにした。  この鈍行はボックス席になっていた。平日の昼間ということもあり人は疎らだ。それでも一応、駅に停車する度少しずつ乗客が増えたり減ったりを繰り返している。     
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