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明け方近く、行方不明だった漁師の死体が上がったという声が外からした。私はぼんやりと目を覚ました。外で慌ただしく話している声が耳に入ってきた。
上がった死体は下半身だけだったという。落ちた時、磯船のスクリューに巻き込まれたのではないか、話の主は興奮して言っていた。
私が宿泊していた部屋は、昔、遠方からコンブ漁に来る漁師達が泊まっていた部屋だったらしい。行方不明になった漁師も、もともとは地元ではなく遠方に住んでいた。他の仲間に連れられてコンブ漁に来ているうちに、そのまま居着いてしまった。この部屋にも何度となく泊まっていたと、旅館の主人は言う。
もしかして、昔の仲間の漁師がこの部屋にいるのかと思って尋ねに来たのかもしれない。
自分の上半身はどこにあるか、と。
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