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おかしなことが起きていた。
可能性として低く……いや、現実に起こると思ったことがない夢の話で……。
早く帰りたいな~、と思う心はその思いも止めた。
単刀直入に言おう。
そう、チョコが自分の下駄箱にあるではないか!?
入れた人は誰かの下駄箱と間違えたのかと思ったが、ピンクの紙に包まれた小さな箱の下に『夢乃翔くんへ』と書かれた紙が挟まれていた。
学校に来た時にはなかった。だとすると、俺が学校に来た後に誰かが入れた……とっ!
テンションが上がる夢乃翔は一人、ガッツポーズをする。
生き始めて十六年間、一度として貰ったことのないバレンタインチョコ。
生涯貰えるのか、と不安になっていたがッ!
お母さん、お父さん。俺、ついに彼女ができ――……でき、る…………?
チョコをさっそく拝見しようとしたが、なにかおかしい。
おかしいというのは、中に入っていたのがチョコではないようで。
「ハンカチ?」
中に入っていた布を取り出すと、それは畳まれた純白のハンカチだった。
なんだよぉ~、チョコじゃないのか~……。
待ち合わせしている男友達に見せつけようとしたら、まさかのハンカチ。
……まっ、いいんだけどさ。今まで親以外に贈り物を貰ったことがない俺にとって、これでも満足でき
「パンツだ……可愛いパン……ツッッッ!?」
ハンカチと思っていた布は重力に引っ張られ、本当の姿を現した。
一瞬、全てが止まったように静かになった。
いや、他全てを置き去りにし、思考だけ一秒が数十分と思わせる程まで早く……。
待て、待て待て待て!? どういうことだ!? なんで下駄箱の中にパンツ入ってんの!?
分らない、分からない!? どういう意図でこれを――!?
つか、今日バレンタインなんだから入れるのは〝パンツ〟じゃなくて、〝チョコ〟が普通つーか、一般じゃないの!? いやその前に、人の、それも男子の下駄箱にパンツ入れるってどういうこと!?
どこからどう見ても、チョコに。ハンカチすら見えない。明らかに女性もののパンツ。
……違う!
今は〝プレゼント〟じゃなくて、〝差し出した人〟を気にするべきで――!
何か手掛かりになるものは入っていないか、とパンツが入っていた箱をもう一度見る。
しかし、手掛かりがあったのは箱の中ではなく、自分の名前が書かれた紙の裏だった。
『君の部屋で待ってます。by夜空あゆ』
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