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俺の家は学校から電車で二十分ほど距離がある。
しかし、俺の部屋にいるってどういうことだ?
一年近く電車通学をしているが、同じ制服を着た人を見ることはあまりない。
あっても、学校から一番近い駅で見るくらいで。俺が乗る駅で見ることは滅多にない。
俺がどこ住まいなのか、分からないはず。
田所のようなイケメン陽キャ野郎はストーキングをされて、住所バレたらしいが。
俺にそんな恐ろしいイベントは起きていないし、起こるはずない。
だって、知って誰が得する? こんなパッとしないやつの家知ってさ!
まあいいか。きっとネタだろうし、嘘に決まってる。
降りる駅まで時間があるため、暇つぶしに本を読み始める――
――――二十分後。
「……本当にいたし」
俺のベッドの上で座って、平然と本を読んでいる少女。俺の声で気が付いたのか、顔を上げる。
「あっ、来た来た。おかえりなさい」
「当たり前のように言わないでくれます?」
読んでいた本を横に置き、目を合わせてきた。
夜空あゆ。学年トップの学力の持ち主で、学校一美少女と称賛されている。俺にチョコではなく、ハンカチでもなく。パンツを渡してきたご本人。
とりあえず――、
「なんで俺の部屋にいるんですか!? いや、なんで俺んちにいるの!?」
パンツの件も重要だが、それより女子が自分の部屋にいること。話したことがない人が当たり前のように家に上がっているのだ。おかしいだろ!?
なんで彼女が――!? 鍵はかけたはず! いや、まずなんで俺んちを知ってる!?
オーバーヒートしそうになる理性をとりあえず、深呼吸をして落ち着かせる。
「なんでって言われても、私、ここに住むことになったからだよ」
「――――ッ!?」
返ってきた言葉に、何も言葉が出てこなかった。
どういうことだ!?
住む? 誰と? 俺と? 誰が? この人と? どこで? この家で?
冷静に疑問を抱いていく理性だが、理解できるはずなく、ついには思考が止まった。
ぽかんとする俺を無視するように続ける。
「本当だよ? もう君には話が回っていると思うけど」
……はあ? 話を、していただと?
そんな話、聞いたことない! 女子と住むって――――ッ!
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