プレゼントの中身はチョコより甘く、危ないもの。

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「どうして、チョコの代わりがパンツなんですかねえ!? コンビニにあるのでいいじゃん!」  混乱したせいで敬語じゃなくなったが、彼女は気にしないで続ける。 「それだと愛が伝わらないかなって」 「モテない男子にとって、女子からチョコ貰うだけで嬉しいものなの! つか何? 愛!?」  何々? 愛だと? 何? 俺のこと好きとか? ――ねえな、俺の勘違いだ。  言い間違いだろう。気にしないでおこう。  見ると、夜空さんはもじもじし始めた。……トイレ? 「えっと……ね。私……君の…………」  顔を赤くして、ソワソワし始める。  ……何でしょうか? この雰囲気は。  さっきと急に雰囲気が変わった。主にこの人が……あっ、分かった。 「私……! 君のことがす――――」 「これ、やっぱ返すよ。気持ちだけもらっておく――……えっ?」  言葉が重なり、彼女の言葉が聞き取れなかった。  彼女は耳まで真っ赤にして、ぽかんと口を半開きにしている。  事態を把握してない様で。とりあえず、俺から説明することにした。 「俺がこれ持っていることがやっぱり恥ずかしいって思ったんじゃないんですか?」  前に出した右手には彼女のパンツがあり、あまり目を合わせないようにするため、顔を逸らす。  少しして右手に小さな指の感触が伝わってきた。 「…………」 「…………な、なんでしょう?」  視線を感じて振り向くと、立ち上がり、俺の前に立っている夜空あゆの顔が。  身長差のせいで自然と上目遣いになり、じっと俺の顔を見てきた。  女子の手を触るとか、やばいんですけど! それだけで十分っていうか!  その上目遣いやめて! 理性抑えきれなくなっちゃう!!  気持ちを抑えることで精一杯な俺に対し、彼女は頬を膨らませた。 「むう…………」 「えっと……なんかごめんなさい」  意味は分からないが、何か読み違えたのは確定した。  上目遣いといっても、完全に睨まれている。 「……ばか」  罵倒されました、自分。しかし何故だろう。 「かわいい」  この気持ちが昂るのは――!?  女子に囲まれて、鼻の下を伸ばしているあの田所っていう野郎に罵倒されるより、何十倍と――いや、まず比べることすらできないだろう。  心から想う。もっと、もっと罵倒してほし―― 「ど、どうしたんです?」  再びぽかんとする彼女は少し笑い、目を逸らした。  ……俺が告白みたいのをしても、まあこうなるよな。
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