0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここって何処かわかるかい?」
学生寮を出ると道を聞かれた。話しかけてきた男は地図と大きなボストンバッグを抱えていた。
「黄泉ヶ淵4丁目ですよ」
このテンプレなセリフを言うのは何回目なのだろうか。この街に来てから何度も言わされるこのセリフは看板が少ないのが原因に違いない。いまだに所々壊れた町並みも復興される気配がない。
「そうか・・・ありがとね・・・」
地図を見ながら去る男。この街では新陳代謝が激しいので新しい入植者が毎日やってくる。たいていは少し霊能力のある借金持ちが多い。そう言う連中は少し慣れると大きな仕事に挑んでこの街に飲み込まれていく。そしてこの街の本当の意味での住人になっていくのだが・・・・。
そんなものなのだ世の中なんて。
しかし大勢の人が来ることはない。ポツポツのような気がする。減る人と入る人の定数は決まっているのかもしれない・・・・知らないけどね。
他に来るのは清濁わけのわからない信念を持った変わり者と言ったところだろうか。かく言う僕はお金のために来ている。借金があるので家族の生活を支えるための出稼ぎだった。
一定以上の霊力を認められたものだけが立ち入りを許されるこの街では、あちこちで入手できる怪しげなアイテムや霊でさえ高額買取されている。小学生でも拾うだけで大金を稼ぐチャンスがあるのだ。
もちろんこの街では公然と命の保障がされてない。日々怪異は更新され、いつどこで何が起こるかもわからない。ここでは命が突然ともし火のように消えてしまっても文句は言えない。
一寸先は闇・・・・そんな言葉の似合う街だ。
「・・・・・」
気を取り直して学校に向う。この街に来るものは大体は何かしらの所属になる。未成年なら学生だし大人なら公団に入って生活インフラを支える仕事につくのがメジャーだ。他にも仕事につかない研究者や冒険者と言った称号の人もいる。どちらも似たようなものだが、この人たちはあちこちに繰り出して怪しげなアイテム・他を探し求める。一番回転率が高い人種だ。
とにかくあせる人・調子に乗る人・油断する人・運のない人はすぐにいなくなる。
最初のコメントを投稿しよう!