似すぎた街並み

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そう考えると多少の疲れなど乗り越えられる――思い出しても身の毛がよだつ、悪が(うごめ)くあんな悲惨なシーンを見るよりはずっとマシだ。 「やっぱり近々休もうか?」 私の顔色が変わったからだろう、響さんが気遣ってくれる。 「いえ! お客様がガッカリされます。大丈夫です」 突然の臨時休業でお店が閉まっていたとしても、お客様たちは文句も言わずにまた来てくれる。店主である響さんの人徳だろうが、好意に甘えてばかりいてはいけないと思う。 「それに、お休みでダラダラしていたら余計に疲れちゃいます」 根が貧乏性だからだ。 「ありがとう。香織は本当に優しいね」 響さんの目が柔らかく微笑む。 彼と恋人同士になっても、未だにこういう瞳で見つめられると胸がドキドキする。 「何を真っ赤になってるのかな? 香織はいつまで経っても初々しいね」 「もう、からかわないで下さい」 「本当、いつまでも熱々だね」と突然第三者の声が割り入った。 「妙快!」 「それに弥生ちゃん!」 藤宮弥生……彼女は私の親友。そして、妙快さんは響さんの親友で藤宮家の婿養子。そう、二人は夫婦なのだ。 その二人が揃って入り口付近に立っていた。毎度思うが迫力のビジュアルペアだ。 ――それより、やっぱりドアベルが鳴らなかった。なぜ鳴らないのだろう? 「君たち、何度も言ってるけど営業時間内に来てくれるかな。ハッキリ言って迷惑。帰れ」 シッシッと犬でも追い払うように響さんが手を払う。
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