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「どの国も同じように近代化されていってるけど、長い年月を重ね培われたその国独特の文化は大切にして欲しいと思う。だって、つまんないじゃない? どこに行っても同じじゃ」
北氷君の意見はもっともだ。
「意外にいいこと言いますね」
「意外は余計だ……あれっ? あれって妙快さん?」
北氷君が言葉半ばで前方を指差した。
「本当だ」
北氷君と顔を見合わせて、即座に駆け出す。
「妙快さん、どうしたんですか?」
「えっ! お前らどうしてここに?」
うろたえる妙快さんなんて珍しいと思っていると、次の瞬間、妙快さんが氷点下の眼で北氷君を睨み付けた。
「うわっ、ちょっと待って。だって……」と彼の目が『助けてよ』と私に訴えかける。
「えっと……智也君の様子を見にきたんですけど、妙快さんはどうしてここに?」
チッと妙快さんが盛大な舌打ちをした。
「くそっ、俺としたことが……道場に連絡を入れ忘れた」
「――もしかしたら、まだ見つからないの?」
「北氷君? それどういう意味?」
「あっ!」しまった、というような顔で北氷君が両手で自分の口を覆ったが、時、既に遅しだ。
「どういう意味ですか!」
執拗に訊ねると、北氷君の頭に拳骨を一発お見舞いした後、妙快さんが代わりに答えてくれた。
「智也がいなくなったんだ」
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