似すぎた街並み

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「どお、少しは疲れが取れたかな?」 あっ、と目を見開く。 「分からないとでも思った? ごめんね、なかなか休みが取れなくて……」 それは何も響さんのせいばかりではない。 メモリーは臨時休業が多い。それもこれも響さんが『視える』人で『クォーリー』だからだ。 視える人というのは『宿借り』が視える人のことで、宿借りとは守護霊を含む霊全般をいい、悪霊も含まれるそうだが、悪霊は悪霊のまま『悪霊』と呼ぶことが多いらしい。 そして、クォーリーとは『獲物』のことだ。 『視えない』者たちで組織化された『ハングマン』と呼ばれる『狩る者』が、クォーリーを排除することを『視える者狩り』と呼び、それがここのところ動きを活発にしていた。 ちなみに、私は全く『視えない』人だが、なぜかクォーリーのメンバーだ。私が『使者』だからそうだ。 ――と、いろいろ説明を受けたが、未だに理解できていない部分が多々ある。 そのクォーリーの(どん)というのが板前さんという人で、各種マスメディアでも再々紹介されている“寿司処とわ”という老舗高級料亭の経営者だ。 その板前さんが『主人』と呼び、仕えているのが戸川という豪族一族の末裔である戸川学氏。 メモリーは彼らから連絡が入るとクローズしてしまう。逆に、連絡がないと余程の用事がない限り休むことはない。 「お店を開けていられるということは平和だということですよね?」
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