プロローグ

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――まだ記憶に新しいと思うが、『猟奇殺人か?』と取り沙汰され、世間を震撼(しんかん)させたあの事件、覚えているよね? そう、五年前に起こったあれだ。 発端は……近江大学廃村調査隊なるサークルのメンバー五人が、十数年前廃村になった鬼尾谷村(きびたにむら)に足を踏み入れた……だったよね? その鬼尾谷村だが、宮藤山(みやふじやま)という藤宮稲荷山(ふじみやいなりやま)とピーク(山頂)を並べる山の奥深くにあった。 ちなみにだが、二つの山は双子山と呼ばれるほど良く似ているよね。 しかし、受ける印象は――藤宮稲荷山が“明”や“表”と形容されるのに対して、宮藤山は“暗”や“裏”と比喩されるほど違う。それがさらに顕著になったのはあの事件でだ。 そう言えば廃村調査隊は、そのことがあって本来の目的が達成できなかったんだよね? まぁ、死後約一ヶ月という生々しい亡骸を三体も発見したんだ、当然と言えば当然か。 この知らせを受けて飛んできた巡査は、遺体の身元を、廃村後もそこに住んでいた一家のものだと思ったようだね? でも、断定はされなかった。何故なら、その後の捜査でそれ以外に老若男女合わせて九十九体もの遺体が村のあちこちから見つかったからだ。 それら全て、未だ身元は不明のまま。分かっているのは、時期同じくして亡くなったものだということだった。 当時は捜査本部まで設けられ、事件・事故、双方から大々的に捜査されたが……結局のところ事件性無しと結論付けられ、集団自殺として幕引きされた。 思い返しても奇怪でセンセーショナルな事件だったねぇ。
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