プロローグ

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「発見した遺体もだが……関係者に聞いたところ、亡くなったメンバーたちもかなり酷い死相をしていたそうだね?」 途端に青年の瞳に恐怖の色が浮かぶ。 「この五年の間にメンバー五人のうち四人亡くなった。残るは君だけだ」 土田が意味深にニヤリと笑った。 「ジャーナリストとして疑問を解き、真実を知りたいと思うのは当然の性だろ? そう思わないかい? 教えてくれないか、あの日、何を見たんだい?」 押しの強い物言いと狩人のような鋭い眼に、張り詰めていた青年の思考回路がプツンと音を立て切れた。 「うるさい、うるさい、うるさい!」 そして、途切れたそこからあの日のことが噴き出し、フラッシュバックが起こる。 今の彼と違って、当時の彼はお茶目で悪戯好きだった――仲間から『お子ちゃまだなぁ』と言われるほど。 あの日も、『気分が悪くなった』と言って帰ったが、それはフリだった。一旦身を隠した彼は、頃合いを見て『サプライズ!』と言いながら颯爽と登場する計画を立てていた。 しかし、予想外のことが起こった。村に近付くにつれて本当に気持ちが悪くなってきたのだ。 ――忘れようとしてもどうしても忘れられない……悪臭。 当時を思い出したのか、青年は無意識に鼻を擦り始めた。 一説に匂いと記憶は密接に結びついているとある。その説どおりに彼は忘却の彼方に押し込めていたメモリーを鮮やかに蘇らせてしまった。
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