序説

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いつからか僕は、より幸福になれる道を選ばなくなっていた。 さらなる幸せを目指す人は沢山いる。けれどもそのどれだけがより幸せになれて、そのどれだけがさらに不幸になるのかは誰にもわからない。  幸せになれる人は持っている人で、なれない人は持っていない人。 短い人生しか歩んでない子供ですらわかってしまうこと。僕は――持っていない方の人間だ。 きっと、僕は今あるもので満足しなくちゃいけない。  いつの間にか、そういうものだと受け入れてしまっていた。  だから僕は選ばない。  選ぶと、さらに不幸になってしまう気がするから。僕はまだ不幸ではないから。僕は、不幸になるのが――怖いから。
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