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◇
駅前の洋食屋の前に着いた。
名前は――
「ボンヘウ……?」
なんだ? 何語なんだ? 英語じゃない――よね。
ま、英語だったとしても全然わからないんだけどね。
そんなことよりご飯ご飯。
横の細道から裏口に回る。
緑色の鉄でできたごみ箱を開け、中を確認する。
「ふむふむ」
やっぱり今日もいっぱいあるぞ。
なにやら洋食屋の人は新しいメニューを作ろうとしているのか、やたらとごみ――いやいや、まだ食べれる部分が多い食材が出される。
ま、僕としては空腹を紛らわすことが出来るから大いに結構なんだけどね。
しかし、食べれる部分が多いといっても所詮はもういらないものとして出される部分、いくら食べても――
「お腹が満たされて幸せ」
――なんてことになるわけもなく、大体いつも空腹だ。
それでもやはり自分の食糧――生命線の一つには変わりがないものなのでありがたくいただく。
しっかりと感謝と敬意を込めて――
「いただきます」
◇
お昼頃。
まだ朝ご飯を食べてから三時間ほどしか経っていないのだが、お腹が低めの叫び声をあげて食糧、カロリー――要するに体を動かすためのエネルギーをよこせと催促する。
手足とは違い、内臓部分は自分の意思では制御しきれないものだと実感する。
「あぁ、お腹減ったー」
そう言いながら公園のベンチに寝ころぶ。
どうして僕がこんな乞食みたいなことをしてるかといえば、うん、まぁ乞食だからなんだけど。
別に特別な事情があるわけでもない。
両親を事故で亡くし、引き取ってくれた祖父母も高齢により他界、そんでもって親が抱えていた借金のおかげで家も無くなって、なんとなく生活してたらこんな状況になっちゃったってだけの話。
振り返ってみてもたった三行程で話し終わっちゃうような出来事で全部を無くしたわけなんだけど、別に特別不幸ってわけじゃない。
誰にでも起こりうるちょっとした出来事の一つってだけ。
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