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月とスッポンな関係
爽やかな笑顔を惜しげもなく振りまいて、完璧な振る舞いをする彼にずかずかと大股で近づく。
何度言っても改善されないこの申請書に、今日という今日は怒鳴ってやると心づもっていた。
「都倉さん、お楽しみのところ悪いんですけど、この申請書では承認できかねます」
デスクの傍らで女の子と談笑していた彼に向かって、心の中で何度も反芻した言葉を口にする。
その瞬間、彼の視線はもちろんのこと、彼を囲っていた女の子の嫌悪な視線まで一気に集まった。だけど気にすることなく私は続けた。
「何度も言いますが、出張先で行かれたプライベートなお店や、そのタクシー費用は経費では落ちませんから」
出張費で出るのはそこに行くまでの旅費とホテル代。それなのに何度言ってもこの男は懲りずに申請してくる。いかがわしいお店の領収書までついてくることもある。その度にこうやって注意するのだけれど、全くもって生かされない。
「え? そうだっけ?」
「何度も言ってます」
憤慨する私に、都倉さんは綺麗な顔を傾げ、知らなかったなぁ、ととぼけてみせる。
そんな顔したって落ちないものは落ちない。隣にいる女子社員はある意味もう落ちているようだけれど、お金はそう簡単に落とすわけにはいかない。経理部の名に懸けて。
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