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「木ノ子さん。早く例のモノをお渡ししないと。柚衣ちゃん良かったね!彼氏さんが迎えに来てくれて」 「は、はい!ありがとうございます!」 無駄口を叩いていた奈倉は伊達からの指摘にハッとして奥の部屋に引っ込んでしまった。 敏光Tシャツを取りに行ったのだろう。 しかしこの店は猫カフェなのに猫がいないし、その猫がいないのはエージェントなる人物が関わっているらしい。 なんという怪しさ満載! 秘密の組織かなにかだろうか。 しばらくして奈倉が1枚の紙切れを手にして戻ってきた。 「本当はこの場で『もちもち山敏光』Tシャツをお持ち帰りいただく予定でしたが、危険ですので後日郵送にてお渡しいたします。こちらの用紙に必要事項をお書きください」 「えっ!敏光さまTシャツ今日はもらえないんですか?」 柚衣があからさまに落胆の声をあげる。 「ごめんね柚衣ちゃん。Tシャツ楽しみにして来てくれたんだよね。でもほら、外を見てごらんよ」 店の外にはいつの間にかまた人だかりができている。 振り切ったつもりでいた蒼馬だったが、この場所を嗅ぎ付けられてしまったらしい。 今日は諦めたほうが良さそうだ。
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