5人が本棚に入れています
本棚に追加
「フッ…………フハハハハ!」
奈倉(田倉)はビクッとして伊達の方を見た。
伊達が笑うときはいつも上品で育ちの良さを感じさせるのに、今のは一体どうしたのだろうか。
「わ、私、ちょっとごめんなさい」
奈倉(田倉)はトイレに駆け込んだ。
さっきの鋭い動きといい尊大な笑いといい、伊達が豹変したことに驚きを隠せなかったのだ。
心を落ち着かせるまでトイレに籠るつもりでいる。
そんな時に再び来訪者が店に入ってきた。
「田倉さん……?あっダンテ様!いらしていたのですか」
「金海のことだからどうせ先にここに来て油売ってから俺に報告に来るんだろうと予測してた。だから俺が自らここに出向いてやったんだよ」
「(なんでバレたんだろう)もっ申し訳ありません!ところで田倉さんの姿が……」
バンと激しい音を響かせてトイレの扉が開いた。
田倉(奈倉)が困惑の表情を浮かべて呟く。
「いま、確か『ダンテ様』って……」
「田倉さん!そこにいるってことは、聞いてしまったのね…………」
そう、田倉は知らなかった。
この店でアルバイト店員として働いている伊達優作は仮の姿。
実は『秘密結社 猫の爪』の最高幹部(裏ボス)で、エージェントたちから『ダンテ』と呼ばれているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!