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序章
町の雑踏に紛れて一人の少女が走る。
学生服を着た少女は翻るスカートを気にした様子も無く、ポニーテールを振り乱しながら鬼気迫る表情で人混みを掻き分けていく。
途中ぶつかったサラリーマンが迷惑そうな顔をして睨み付けたが、少女はそれを気にした様子も無く――正確には気にしている暇も無いのだが――走り抜ける。
「――っ!」
何かに追われるように息を切らせて走る焦りと恐怖で彩られたその表情に余裕は無い。
周囲の人間はその少女を見て首を傾げる。何かに追われるように走っているのだが、少女を追う者は存在しないのだ。
少なくとも、目に見える範囲には。
(――まだ、【アレ】が追って来てる!!)
しかし、少女の目には見えていた。
自らを追いかける、追跡者の姿を改めて確認する。
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