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今度は声にして気持ちを表した稲穂。
そこに込められた感情は『困惑』ではなく『怒り』。
この女は呪われたので何とかしてくれと泣きついてきたのだ。しかも驚くくらい軽く。
過去実際に呪われ、酷い目に遭った稲穂からすれば、話を持ってこられるだけで迷惑なのに、それを茶化されるのは苦痛でしかない。
「……で?」
「ん?「で」って?」
「呪われたってことは何かあったんでしょう?じゃなかったらわざわざこれが本物なんて言わないでしょう?」
それを説明してほしいと促す稲穂。
正直「ふざけるな」と怒鳴りつけてしまいたいが、安易に決めつけてしまうのはよくない。話を聞いた上なら、まだ引っ叩いて追い返しても自分に納得できる。
だから少し我慢して話を聞く事にした。
「あったあった、ありまくりだよ~。まずコンビニで買い物した時にお金が足りなかったでしょ~」
(それはお前の頭が悪いだけだ)
「で、命の次に大事なスマホ間違えて洗濯機にかけちゃうし」
(それはただの不注意だ)
「その修理代のせいでお小遣い下げられちゃうしぃ」
(……ただの自業自得ですねぇ)
そろそろ許されるだろうと稲穂が右手を振り上げようとした瞬間、
「後、アッキーがいなくなったし」
(それは…………えっ?)
さらりと、大した事が無いかのように言った山根の言葉に、一瞬思考が止まる。
「……いなくなった?」
「うん、アッキーがね、二日前に」
――淡々と平然と、稲穂の目の前のギャルはそう言った。
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