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「――と、言うのがここに来た流れです」
――所変わって相模探偵事務所。
項垂れながら学園での経緯を説明した稲穂は、心底疲れた様子だった。
「……えっと、うん。お疲れさま」
相模は思わず敬語で稲穂を労う。
「……甘いものは疲れに効くらしいぞ、精神にも効くかは分からんが」
そう言って白髪ですら気を使って、皿に盛られたトリュフチョコレートを稲穂の前に置く。
「あ、いいな~稲穂っち。一つ貰うね」
そう言って稲穂の隣に座っていた山根がチョコに手を付けた。
「あ、私も~」といって残りの二人も手を伸ばす。
「…………」
白髪は無言で、それを咎めるでもなく、相模の定位置であるデスクの椅子に座り窓の方を向いた。
「それで、その「アッキー」というのは?」
「ん? あたし等のトモだヨ?」
山根はあっけらかんとそう言った。
どうも相模の意図が伝わっていないようで、内心で「まいったな」と呟く。
「秋貞さんという人は、黒縁のメガネをかけた人で三つ編みの女の子です」
そんな相模の心情を読み取ったのか、稲穂が補足説明をする。
「見た感じ真面目で、とても家出したり、無断外泊するような子では無いように見えました。ですよね?」
「そうそう、アッキー真面目ちゃんだからね~。誰にも何も言わずいなくなるとは思えないんだよねぇ~」「うんうん」「絶対なさげだよねぇ」
稲穂の説明に同意する山根。
それに追従して村田と浅子も返す。
「でもね、二日前に学園に来なくなって、携帯にかけたらお母さんが出て、必死に何か知らないか聞いてきたの」
「いや~、あれは正直必死過ぎて引いたわ。マジ泣きしてんの」
「ウチの親なんて一週間留守にしてもなんも言わないのにね~」
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