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(こいつら……)
相模は三人の話にうんざりしていた。
親が子供を心配するのは当然である。それに対して嘲笑うようなその反応は何だ、と怒鳴りつけたくなった。
(一週間も家を留守にするのが常態化しているお前等の親と、真面目な子供の親なら態度が違って当然だろうが!)
叱らない親も親で何をしているんだと憤慨しそうになるが、グッとこらえる。
「相模さん」
稲穂に声をかけられて、相模はハッとそちらに振り替える。
「お願いします、依頼を受けてもらえませんか?」
稲穂は真剣な表情で頼み込んできた。
「正直、彼女とは特別親しいわけでもありません。でも、心配なんです」
「お願いします」と頭を下げてきた。
どうしてそこまでするのか、相模には理解できなかったが、それでもその真摯な願いを無下に断るのは相模にはできない。
「……分かりました。引き受けましょう」
正直、気が乗らないというレベルではなかったが、それでも相模は承諾した。
「……稲穂っち~~~」「うわぁ~ん」「ありがとう~」
「ひゃあぁぁ!」
そう言って山根達三人は稲穂に抱き着いてくる。
稲穂は突然抱き着かれて驚いた声を上げた。
「あたし等の為にわざわざ頭下げてまで、」「マジで感動した、全私が泣いた!」「ウチらズッ友だよぉ~」
それを聞いていた白髪は、ため息を吐きながら思った。
(……うらやましいな、幸せそうで)
その表情には心の底からの侮蔑が現れていたが、背を向けていてその表情は誰にも見えなかった。
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