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「――で? どうすんだ」
ガラス片を袋に詰めながら白髪は相模に主語なく問うた。
「……正直言って、凄まじくやる気がしない」
当然、相模は依頼内容の事だと思った。
「呪いのビデオ」の件は放置できないが、あんな人の思いを理解しない者を救うのは気が乗らない。
「依頼されたからにはやるけどな。できれば別の人から依頼されたかったよ」
「…………」
稲穂も同じ気持ちであった。
心配であるというのは偽らざる本心だが、それは山根達の事ではない。稲穂が心配しているのはいなくなったという「彼女」、秋貞の方である。
母親が涙を流すほど心配しているというのを聞いて、そして呪いに巻き込まれたと聞いて、先輩であった桜芳樹の事を思い出していた。
桜もてけてけの一件に巻き込まれ、そして死んでしまった。
告別式の際、桜の棺に突っ伏して泣いている彼女の母親を見た時、その姿が痛ましすぎて思わず逃げてしまった。
まだ生きているのならば、あんな思いをする人が生まれる前に何とかしたい。だから相模に依頼したのだ。
「そうか、頑張れよ」
ところが白髪はその言葉を聞いて、あっさりと他人事のように返した。
「どうせ今回は俺が役に立たないからな、精々自分でいなくなったか、誰かに攫われたかした少女を救ってやるといい」
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