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「白髪さん……やっぱり、それを壊した事、怒っているんですか?」
白髪は何も答えず袋を部屋の隅に置いて、コーヒーメーカーに近付く。
「だから協力してくれないんですか? あの人達に呪われて殺されてほしいから!」
「ああ、是非とも呪われて殺されて欲しかったね」
そう返して置いてあったカップにコーヒーを注ぎ込む。
「白髪さん! 確かに私だってあの人達は嫌いですけど、今回は「いや違う、そうじゃない」の為に……え?」
相模が稲穂の言葉に割り込む。
相模は確信を持って白髪に問うた。
「弧牛、なんでお前、最初っから失踪の理由に呪いの可能性を除外しているんだ?」
「え?」
相模の問いに、稲穂は困惑する。
そういえば、白髪は「自分でいなくなったか誰かに攫われた」と言っていた。
「なんで【協力しない】じゃなく【役に立たない】なんだ? むしろ呪い関連はお前の専門じゃないか」
白髪弧牛は【呪い殺し】という特異体質である。
白髪に対するあらゆる呪いは効果を発揮せず、呪いの物品は触れるだけで破壊される。
その白髪が、呪いのビデオに対して【役に立たない】?
稲穂も流石に引っかかるものを感じて白髪を見つめる。
「気付くのが遅ぇよ」
白髪はコーヒーを啜りながら、机の上に有った件のDVDをケースから取り出して、事務所にあるDVDレコーダーにセットする
「それじゃ、ちょっと見てみようぜ」
TVの電源を付けてチャンネルを操作すると、丁度DVDの再生が始まったところだった。
「呪いのビデオと言われる、ただの映像作品を、さ」
――白髪は笑いながら、二人にそう返した。
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