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「――ならば、やはりこれはただの悪戯なのだな?」
そして時間は現在、零課のTVモニターにはDVDの映像が映っていた。
内容は、意味不明な映像の連続。
メッセージ性も無く、ただ不気味な映像を切り貼りしているだけ。
最後には何処かの井戸の映像が流れて終了という、まんま某映画と同じである。
「ああ、映像自体に意味は無いけれどな」
「相模さんが真相を知った時、流石に頭を抱えていましたけどね」
可哀そうにと小田原は同情する。
蓋を開けてみれば、真相は簡単なものである。
そもそも呪いのビデオの噂はあったものの、その実物はどこにもなかった。
これは零課が初動捜査の時に判明している。
ビデオを見たという店員も複数いたが、失踪した店員も実際にはバイトを辞めていなくなっただけ。
しかもビデオはその時に消えたらしいので、その店員が持って行ったと思われる。
事情を知らない者が噂と合わせて失踪したと騒ぎ立てただけの悪戯だが、零課としては本物が有った場合に備えて捜査だけを民間協力者達に依頼していたのだ。
相模が知らなかったのは単純に白髪が言わなかっただけで、呪いなら自分を呼び出すので伝える必要もないと思ったのだ。
そして、その白髪から見ても呪いは無いと判断した。その為、早々に話から興味を失ったのだ。
「いやぁ、楽しみだなぁ。あいつが存在しない呪いをどういう風に解決するのか」
心底意地悪く笑った白髪は、椅子の背もたれを前にして映像を見ている。
「悪趣味な……」と小田原が言うのを気にした風もない。
何せ、呪いを信じている相手に「呪いはありません」と言っても信じてくれないのは目に見えている。稲穂の一件からも、人の話を聞かない山根を説き伏せる為、相模は必死にフェイクエピソードを作っている頃だろう。
「まあ、クソガキどもが死んでほしいと思ったのはマジだがな。ムカつき過ぎてやけ食いをしちまうくらいには」
レシートが長くなった理由はそれか、と小田原は嘆息する。
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