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そうなのだ。
全てが都合よく話が運び過ぎている。
「まず、最初に呪いのビデオの話が広がる」
皿の上のオムライスを切り分けながら話を整理する。
「次に実際に見た人が消えたという話が広がる。ここまではいいんです」
消えた店員=呪いのビデオを広めた犯人、という図式ならここまでは上手くいってもおかしくない。
「でも、その後の捜査で実物は無かったんですよね? その人が持って行っちゃって」
「ああ。こと捜査力に関して言えば、信用できる筋からの情報だからな」
「……じゃあ、やっぱりおかしいですよ。だって実物、出てきたじゃないですか」
白髪の懐にあるのは呪いのビデオの実物だ。
話によれば、レンタルショップから出てきたという。
「秋貞=店員なら筋が通るだろう?」
「うちの学園はバイト禁止なんです。真面目だった秋貞さんが校則を破ってバイトしているとは思えませんし、バイトをしていたのならあの三人が秋貞さんの悪戯を疑っていないのも気になります」
秋貞=犯人であればあの三人がわざわざ他人に相談するとは思えない。
むしろ犯人でなくても犯人として吊るし上げてもおかしくはないと稲穂は考えていた。
しかし、実際には大して面識のない稲穂に相談しており、一目で怪しげな探偵事務所にまで足を運んでいる。少なくとも秋貞の悪戯を疑うような兆候は無かったのではないかと予想できた。
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