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「……そんな意見が出るってことは、やっぱり秋貞って奴はいじめられてたのか?」
「……手下みたいに扱われてはいました」
秋貞は四人グループにそぐわない少女だった。
他の三人が傍目に見ても『良くないギャル』であったのに対し、秋貞は『地味で内気な少女』に傍目から見えていた。
聞いた話では山根と幼馴染らしいので、それで一緒にいてこき使われていたのではないかと周囲から思われていた。
ーー秋貞に対する三人の扱いを見ても、その噂が真実であろうと察するのは容易だ、と稲穂は思っていた。
「グループでも浮いていた秋貞さん、そのグループが呪いのビデオを見つけて、浮いていた秋貞さんが消えた……これでオカルトでも無いなら、偶然だというだけで済ませるには無理が――」
「稲穂」
白髪は食べる手を止め、今までの気の無い返事から真剣な声に代わる。
その表情は真面目そのものであった。
「俺は人間が生きていく上で、全てを知る必要は無いと思っている」
その言葉は妙に重いものを孕んでいたように感じられた。
「世の中には知らない方がいい事もある。てけてけみたいな怪異もそうだし、今回の件もそうだ」
「…………」
「好奇心は猫を殺す。お前が今触れようとしているのは、決して気持ちの良い物でもないし、むしろ害になる事だ」
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