第二話 呪いのビデオ

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 * 「話を整理しよう」  白髪はそう言って、ホワイトボードに今回の登場人物を一人ずつ記載していく。  書き込まれたのは『山根』、『田村』、『浅子』、『秋貞』。  『レンタルショップの店員』、そして『呪いのビデオの犯人』の六人、 「まず、大前提として。レンタルショップ店員=呪いのビデオの犯人≠秋貞なのは確定としておく」  店員と犯人の間に『=』を書き、犯人と秋貞の間に『≠』を記載する。  これは零課の捜査で判明している事実だ。  ショップの防犯カメラに映った人物と、山根から貰った写メの画像を淡島に確認して貰ったが別人であったのは間違いない。 「でも、呪いのビデオを四人に見せたのは犯人の仕業ですか?」 「もちろん、違う。現場から呪いのビデオの実物は消えていたし、他のDVDに偽装されているものも無かった。だよな?」 「ええ、すぐに全店の商品を入れ替えてチェックしましたが、全て表示通りのものでした」  淡島の補足により、確約が取れる。 「つまり、犯人は無差別に呪いのビデオをばらまくつもりは無かったという事ですか? じゃあなんでそんな噂を?」 「怪異を作るためだよ」  稲穂の問いに、イヤに確信を持って断言する白髪。 「先程も言いましたが、怪異は『人が真実だと認識する事』によって発生することもあります。そして、こういう怪異を作ろうとする事象――『怪異テロ』と我々は呼んでいますが、そういった事象は意外と多いのですよ」 「ただし、現在では九割方が具象化しないがな。具象化した有名な事象は確か……『口裂け女』とかが流行っていた頃くらいだったか?」 「ええ、『口裂け女』の場合は、当初噂に便乗した愉快犯が口裂け女を模して起こした事件が、人々に誤解され『口裂け女は本当にいる』と思われた結果、具象化した例ですね」  当時はインターネット等の情報網が未熟であった時代。  しかも人々がまだ信心深い時代であったこと、科学に対する知識が一般に深く普及していなかった事、メディアが面白おかしく騒ぎ立てた等の事象が重なり、そう言った怪異が現実に現れることが多かった。
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