1年生なのね

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1年生なのね

最悪だ。 中間テストを2週間後に控えているというのに、入院することになってしまうとは。 俺が通っているのは公立の自称進学校。勉強しないと……かなりマズい。 1日中ベッドの上でも気が滅入るし、待合室で勉強することにした。英語の参考書と、200枚入りのルーズリーフ、中学生の頃から使っているペンケースを持って、俺は病室を出た。 俺が入院するのは神経内科。おじいちゃんとおばあちゃんが大半を占めている病棟。 参考書を開いて演習していると、早速おばあちゃんに話しかけられた。 「偉いねぇ。こんなところに来てまで勉強なんて」 「……はい、もうすぐテストなんですよ」 「へぇ、頑張ってね」 初めは身構えてしまったが、みんなが優しくしてくれるので、しばらくすれば長く会話ができるようになった。 入院して4日目くらいの昼頃。 50代くらいのおばさんに話しかけられた。 「あら、受験生?」 大学受験の勉強だと思われたのだろう。俺は高校1年生。実年齢より大人っぽく見られるなんて。 「いえ、テスト勉強なんです」 おばさんは少し驚いた顔をして言った。 「あら、何年生なの?」 「1年生です」 答えると、おばさんは更に目を見張った。 「まあ、最近の子って大人っぽいのね……」 嬉しいことを言ってくれるではないか。今まで、若く見られることの多かった俺は、多分にやけてた。 「中1の内容も、高校受験に関わるからね。うちの息子が高2なんだけど、受験のときに1年生の内容を忘れてて、復習が大変だったのよ。頑張ってね」 ……ん? 中学生だと思われてるってことか?? あなたの息子さんと1歳違いなんですけど……。 でも今更『実は高校生なんです』なんて言えない。俺は中学生役に徹することにした。 「はい、ありがとうございます! 頑張ります!」 満面の笑みで返事した。 看護師さんにその話をしたら、半笑いで 「若く見えるって、大人になってから得だよ」 と言われた。 早く大人になりたい。
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