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シャーペンの消しゴム使う?
俺はシャーペンの上に付いている消しゴムを使う。
消しゴムを持ち歩かなくても済むし、意外と消しやすかったりする。細かい字を消したいとき、消しゴムを使うためだけに、ペンケースからシャーペンを派遣することもある。
ある日の朝。
隣の席の木村が、腕をつついてきた。
「上田、シャーペン貸してくれない? 筆箱ごと家に忘れちった」
「ああ、いいよ……俺、消しゴムは1個しか持ってないから貸せないや」
木村は少し考えてから言った。
「上田って、シャーペンの消しゴム使っても怒らない人?」
「……あ、うん。俺も普通に使う」
「じゃあそれで乗り切るわ」
いや、他の奴に借りろよ……なんて言えるはずもなく、俺はOKを出した。
幸い、今日はプロジェクターでの説明がメインの授業が多かったので、文字を書く機会が少なかった。
たびたび、隣で逆立ちしたシャーペンが小刻みに動くのを目にしたが、そこまで擦り減ってはいないだろう。まあ擦り減ったところで、そこまで困ることはないが。
帰りのHRが終わると、木村にシャーペンを差し出された。
「ありがとう。マジで助かったわ」
「おう、いいよ」
木村が帰ってから、俺は貸したシャーペンをノックした。
1日使って、芯が短くなったようだ。
新しい芯を入れようと、俺はシャーペンのキャップを取り、消しゴムを抜こうとした。
……えっ。抜けない。
消しゴムが短くなり、抜けなくなった。爪を刺しても、削れて千切れるだけ。
『まあ擦り減ったところで、そこまで困ることはないが。』
前言撤回。
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