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影松side
知らない緑色パーカーの人にお金を払ってもらって、喫茶店に連れて来られた。
外、薄暗かったからなぁ。
あぁ、電気が眩しい。
俯いたままで居ると、緑色パーカーの人がコップに水のような物を入れて持ってきた。
「ほら、この水飲んで。そうしたらお話しよう?」
水、水…そうか、それなら安心。
水ならお父さんがいつも飲ませてくれるから。
でも。何か味が違う。
「………これ、水じゃない…フワフワしない、美味しくない。」
「これが水だよ。君の知ってる水って、麻薬じゃないの?」
「麻薬…………?」
そんなの知らない。
僕はお父さんのくれる水を信じて飲み続けた。
「ねぇ、君に聞いてもいい?どうして万引きしたの?お金は持ってる?」
緑色パーカーの人がそう尋ねてきた。
僕はボロボロの財布を出して所持金をテーブルに広げた。
なけなしの…20円。
「それしかお金ないの?」
頷くしか無かった。
自分が情けなかった。
この人に迷惑をかけてしまった。
「僕、帰る。」
そう言って逃げるように店を出た。
逆らったらお父さんに怒られる。
僕はお父さんの操り人形だから。
喫茶店の外は飲み込まれるような黒。
まもなく日付が変わろうとしていた。
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