夜の電線

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夜になってから電線を? 変なことを訊くなと思いながらも、目黒さんはどうだろうと普段の生活を振り返ってみたものの、いちいち夜に電線なんて気にしたこともなかったので、素直にそう返事をした。 すると、姪は「そっかぁ」と相槌を打ちながら新しい花火に火を点け、 「実はさぁ、あたしの友達がね、この間塾の帰りにおかしなものを見たって言って、今学校で色々噂になってることがあるの」 と、意味深なことを言い出した。 「おかしなもの?」 何だろうと思いつつ目黒さんが先を促すと、姪はうんと頷いて花火を見つめながら話の続きを語り始めた。 「その友達、塾の日はいつも十時くらいに家に帰るらしいんだけど、帰り道でね、自転車に乗りながら何気なく上を見上げたら、電線の所に何か黒い塊が動いてるのを見つけたんだって」 甥はこの話を既に知っているのか、黙って花火を選んでいる。 「それで、何だろうって思いながら自転車を止めて、ジッとその塊を見てたら……それ、人間の手首だったんだって」
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