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「手首? 手首って、この?」
怪訝に思いながら、目黒さんは自分の左手を顔の高さに掲げた。
「うん。最初ね、一瞬は何かネズミとか、ハクビシンとか迷い込んできた動物かなって、そう思ったんだって。最近、たまーにニュースで野生の狸とか猿が住宅地に出るみたいなの放送したりするし。こっちではしてない?」
「いや、たまにやってるな。虫取網みたいなの持って、警察が追い回してるやつ」
「そうそう、そういうの。友達もね、そんな感じで小さい動物がいるって思ったらしいんだけど、よーく見てたら、それ、間違いなく人間の手首だったって」
姪の持った花火が終わり、辺りが暗くなる。入れ替わるようにして、今度は甥の花火が周囲に明かりを灯した。
「夜だけど、晴れてて月が出てたから、シルエットははっきり見えたんだって。芋虫みたいにクネクネクネクネ指の関節動かしながら、その手首はずっと電線伝いに移動して、そのまま遠くに行っちゃったって。そんな話」
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