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日本の冬は寒い。湿気がまとわりついてくる。
俺は寒いのが大嫌い。今日も首の付け根と腹と腰にホッカイロを貼っている。
黒のセーターに、黒のダウンコート。ニットの帽子も同じ色。
何色にも染まらない黒が好きだ。自分の個性を譲らない。
勘違いしないでほしいが、黒だからなんでもいいっていうわけじゃない。ファンから届いた靴とか、なんだか怖くて履けない。すぐオークションで売る。自分が履いてたズボンとか送ってくる奴の気が知れない。即ゴミ箱行き。
俺にも人権はある。好きなものを着させてくれ。
長時間のフライトを終え、トランクを引きずって到着口を出ると、社長が手を振った。見る度に太くなる。
「お疲れ」
「疲れた」
テンプレートの会話を終えると、早速彼の車に。ベンツとかに乗ってやがる。助手席には、一度開けたと見られるプレゼント用の箱があった。
「お前、チョコ好きじゃないからほぼみんなに配ったけどな。でもそのチョコはとっておきだぞ」
ククッと喉の奥で笑う彼に、訝しむ。コイツが楽しそうな時はろくなことがない。
「指紋がついた手作りチョコとかじゃないのか」
「いいから開けてみな」
チッと舌打ちして下手くそに掛けてあるリボンを引っ張り、箱を開ける。
「……なんだコレ」
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