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今朝、おおよそ出来上がった花の曲。
それをもう少し修正して、俺の名前で売り出す。売り上げは彼女のものにするという条件で。
割と……というか、結構いい線いってる。俺のおかげで。売れると思う。
歌詞は面倒だけど俺が付けよう。そうしないと余分な費用がかかるからな。
ああん?『歌詞書けるのか』って?
バカにすんな。俺を誰だと思ってんだ。
あいつの負ってしまった500万も何とかなるだろう。先にいくらか貸しておけばいいさ。もちろん利子なしで。
「ったく。花はまず男を見る目を養うべきだ」
尖らせた口からブツブツ文句が出てくる。こちとら慈善事業やってるんじゃないんだよ。飛行機代は経費で落とそう。
花に書かせた振込先をスマホにメモする。地方銀行かよ。手数料結構かかるんだよな。
俺の搭乗する便が放送される。人の波が列をなし、その中に紛れると、後ろの方から「西野啓二じゃない?」とヒソヒソ話す女性の声がした。
そうだけど、何だよ。
不機嫌に搭乗券を睨みつけていると、また社長からメールが入った。
ーー土産は「鍋島」っていう地酒で頼むわ。
「知るか!」
了
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