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箱に入っていたのはチョコだと思ったのに、幾重にも折りたたまれた紙だった。開いてみると、それは三枚の楽譜。折り畳む意味が分からない。空白に女性の字でメッセージが書かれていた。
西野啓二さま
あなたにこの曲を捧げます!
「捧げられてもな……」
ぼやく俺の隣で、社長は思わず噴き出した。俺は呆れてフー、と鼻で溜め息をつく。
いや、待てよ。
スランプ中の俺に捧げる歌だと!? バネのように起き上がり、助けの手が差し伸べられた気持ちで譜面に目を落とす。
「…………」
無言になると、社長はもう我慢しきれずに爆笑した。「ヒャーッハッハッハ!」と甲高い声で笑うのが耳障りだ。
「おい……健」
「目がすわってる」
「こいつの住所分かるか」
「行くの!? ブハハハハッ!」
終いには涙を流しながら、彼は笑った。
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