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新しい取引相手
どんな世界にも正義があれば、悪がある。
「情報を買わないか?」
高級料亭での接待が終わった時にはすでに11時を回っていた。あいにく待っている家族はいないが、男は多忙で今日は早めに休み、明日の会議に備えて打ち合わせをしようとしていた。
その帰り際を待ち構えていたかのように、かけられた声をいぶかしく思い、男は立ち止った。
「誰です?」
背の高い女性秘書が警戒の声を上げる。
門の影の闇からひょっこり顔を出したのは、まだ年端もいかぬ少年だった。
見ようには中学生ほどに見える。寒い中、薄い服一枚しか来ておらず、その貧相な体つきから、社長は彼のおかれた状況を察した。
正攻法では自分にはたどり着けない。つても無理だ。
だから、こうやって突撃してきたわけなのだろう。
「まぁ、待て」
と秘書を制してから、社長は少年と向き合った。
野心に満ちた顔つき。その双眸はぎらぎらとして、大企業の社長として顔が知れている自分を改めて図っているようにも見える。
「こんばんは。さて、私が誰か?わかっているのかな」
「この世界で最も有名で、でっかくて、稼いでいて……世界を動かしている大企業の社長だろ」
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