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そう。彼は世界で一番大きな会社の頂点にいる。
およそ彼のかかわらない業種はないと言ってもいい。家庭には彼の会社の商品が置かれて、交通、通信、医療・教育さえも彼の会社は参入し、多くの人の役に立っている。
けれど、おおよそそんな大会社の社長には彼は見えない。
インタビューなどで写真を掲載されるときはあるけれど、何の意図をもってか、だいぶ加工されている。
実際は、中肉中背、すこしやぼったい雰囲気をまとうどこにでもいるサラリーマンにしか見えない。残念なことにそれなりに高いスーツも彼が身にまとうと、少し安上がりな物に見えてしまうから不思議だ。
「よく私がわかったね」
だから純粋に、社長は褒めてしまった。
「で、その私を待ち構えて、情報を売ろうと?……親御さんが心配するよ。早くおうちに帰りなさい」
「あいにく、帰っても両親はいないのでご心配なく」
平然と彼が言うものだから、社長は首をすくめる。
「とりあえず、車で送ろう」
そんな紳士的な提案に彼は首を振る。
「情報を買ってくれ」
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