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「わかった。話は聞こう。しかし、私の立場を考えてほしい。こんな夜中に寒空の下、薄着の子どもと立ち話をする……。私を見つけ出し手待ち伏せするだけの頭がある君なら、周囲からどう見えるのか、察しが付くと思うけど?」
あくまでも社長は穏やかに、とてもあまたの企業を従え数億人に及ぶ人間の雇い主とは思えないほどやさしく少年を諭した。
少年の緊張は相変わらずだが、それでもやはり頭の良い子供なのだろう。ここで自分を主張しても相手は動かないことを察して、指さされた先にある車に方向転換した。
秘書は相手が子どもとはいえ、見知らぬ相手であったし、自分が2人の間に入ることを提案したが、それを社長は却下した。かわりに妥協案として少年を間に挟むように後部座席に座ることにした。
「さて、しばらく適当に車を走らせてくれ」
運転席にいた男にそう告げると、運転席の彼は表情も変えずに、アクセルを踏んだ。
「さて、少年、とりあえず名前を聞いていいかい」
「……健介だ」
「よし、健介君。君の情報を買う……とはまだ言い切れないが、概要だけ教えてもらってもいいかい?」
「闇取引が行われる」
その情報におや?と社長は首をかしげる。
「闇取引?」
「悪の組織の連中の闇取引だ」
「それはいけない」
少年にもわかるように、社長は大げさにため息をついてみせた。
「……で、その得た情報を、なぜ私に言う?」
「あんたの会社は世界を動かすほど大きな会社なんだろう」
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