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その言葉に社長からは乾いた笑いしか出なかった。
思えば、確かに悪の組織に関しては気苦労が多い。
悪の組織は確かに存在している。その規模も目的もその正体もよく知っている。
そして社会的地位がないに等しい少年よりも、ずっと深く悪の組織の面倒くささを思い知っている。
なるほどねぇと相槌を打つと、少年の向こう側にいた秘書に
「社長、お戯れはほどほどに」
と釘を刺されてしまった。
「まぁまぁ、いいじゃないか。……何より面白い。健介君。その情報を買おう。そして、その情報がもし本当だったら君に取引の対価として金を支払おう」
「逃げないよな?」
「もちろん。私を正義だと信じて情報を売ろうとしてくれているのだろう。だから、録音なんて、君が安心できるのなら続けても構わないけどねぇ」
笑い飛ばしながら言ったが、少年は気づかれていないと思っていたのだろうか。びくりと肩を大きく跳ねさせた。
そのしぐさが年頃の少年らしく潔癖で、それでいて度胸のある子どもだったものだから、つい社長は顔をほころばせてしまう。
「さて、本当に君の寝床を教えてくれ。そして目的地につくまでの間に、君が得たという情報を話しなさい」
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