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「ああああツカサ君キミって子はキミって子は」
「ぎゃああああ!! 触んな抱き着くなちょっとおいケツ触んなお前本当ケツ好きだなやめろ!!」
「ふぐっ」
綺麗な右ストレートを決めた俺に、オッサンがひれ伏す。
こ、こんちくしょう。また俺の拳スキルが上がってしまったじゃないか。いや、上がってないけど。痛いけど。本当このオッサン油断も隙もありゃしない。
ロクも押し潰されそうになって不満だったのか、しゃーしゃーと牙を剥いている。いいぞロク、もっと言ってやれい。
「ご、ごめん……嬉しくてつい……」
「アンタはケツ揉むことでしか感動を表せんのか!」
「いやそれは手の近くに柔らかい臀部があったもんでつい」
「あーもー嫌! この天然セクハラオヤジ!!」
「セクハラってなに」
説明したくないです。メンドイから聞かないで。
もう話すのも嫌になっちゃったので、荷物は全部ブラックに任せる事にして、俺は一足先に調理台の方へ向かった。
キャンプをする場所のすぐそばにある調理台は、婆ちゃんの家で見たかまどのような造りになっている。上の面にも穴が開いてるから、ここに鍋とかをつっこんで温めるんだろう。隣に井戸もあって、使い勝手は良さそうだ。
だけどだいぶん放置されていたのか、調理台は煤けて黒ずんでいた。
「うーん……掃除するしかないのか?」
面倒だけどメシは食べたい。暖かいメシは明日への活力だ。やるしかない。
かまどの掃除は婆ちゃんがやってたのを見た記憶がある。
確か、なんかの葉っぱを箒がわりにして煤叩きしたり灰を掻き出すんだっけ。あと煙が出る穴の掃除か。灰が詰まってるとうまく火がつかないらしいし。
「かまど、使えないかい?」
腕まくりをしながら、ブラックが近づいて来る。調理台の近くに野宿の準備をしたらしく、そこにはもう焚火の用意だの薄っぺらい寝袋だのが設置してあった。さすが冒険者、素早い。
あと、そうやって袖をまくってると、なんか男らしくて格好いい気がしないでもない。
あくまでも気がするだけだ。
うん。いや、そういうこと考えてる場合じゃなくて。
「使えなくはないけど、ちょっと掃除が必要でさ」
「え? かまどって掃除するものなのかい?」
きょとんとしてる中年うざ……いや、待て。待とう。
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