211人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
「つか俺、何度も言ってるけど普通に薬作っただけだしね!? 今のところ不思議な力なんてこれっぽっちも感じてないし!」
「それは君が自分の事を知らないだけだよ。誰だってやってみなけりゃ自分の限界は解らない。現にキミは気を集められただろう? 仮に君が曜術師じゃなかったとしても、何らかの能力は秘めてるはずだ。だから、僕はそれを知りたいんだよ」
「なんらかって……なんの?」
曜術師じゃなかったとしても、俺には何かの力があるのだろうか。
もしかして、実は俺にもチート能力が備わってるのかも。
それはちょっと気になる。
恐る恐る聞いてみると、ブラックは肩を竦めた。
「さてね。それは調べてみなきゃ判らない。まあなんにせよ……」
「なんにせよ?」
「僕とツカサ君はいずれ二人っきりで旅に出ごふっ!!」
ブラックの頬に俺の拳っぽいものがぶつかったが、多分気のせいだろう。
「う~ん、俺にも力があるかも知れないのはちょっと嬉しいけど、今のまんまじゃちょっとなあ」
「げほっ……な、なにが問題なの」
「だって、仮に俺がそんな御大層な身分になったら、余計に湖の馬亭に迷惑かからねえ? 今だって俺、娼姫の仕事とか止めて貰ってるし、雑用係もこんな髪してるからロクに手伝えてないし……その上誰かに俺が職持ちってバレたら、余計面倒な事になりそうでさ」
「ツカサ君……」
常々考えていたけど、俺はやっぱり湖の馬亭に迷惑をかけてると思う。
回復薬のことや、娼姫の仕事をストップして貰ってることで、色々と弊害が出始めているからな。
大人しく娼姫の仕事をしていれば、珍しいってだけで騒がれはしなかっただろうけど……正直な話、俺は体を売る商売なんてしたくない。
でも女将さんはそれに不満を言わず、俺のしたいようにさせてくれている。
本当なら、俺にばんばん客を取らせて金を稼ぎたいだろうに。
奴隷ってのは、本来はそうやって扱われる存在なのに。
でも、女将さんもベイリーも決して俺の嫌がる事はしない。
最初のコメントを投稿しよう!