2.ほのぼのキャンプご一行

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   辺りは木々が伐採されていてすっきりしているが、別にバンガローや焚火の為の草が刈り取ってある場所なんてのもない。馬を繋いでおく場所も、肝心の柵はだいぶん古くなっていた。  ……異世界ってこういう所は真新しいイメージだったんだけど、えらく現実味あって嫌だなあ……。石造りの調理場もなんか薄汚れてるし。 「なあ、ここってあんまり人来ないの?」 「僕が来た時は賑わってたけどなあ……馬が普及してきたから、のんびり徒歩で旅をする人が減って、廃れてしまったのかもしれないね」 「馬って昔からあったんじゃないんだ」 「ディオメデの家畜化に成功したのは五年くらい前だから。それまでは、守護獣を持ってる人間以外は歩きだった。世界ってのは、変わるものだね」  少し寂しそうに言いながら、ブラックは馬に積んでいた荷物を降ろす。  手伝いながら、俺はなんだか不思議な心地を覚えていた。  異世界でも昔を懐かしむって当たり前なのか。  いや、大人にとっては、そういう感傷ってもう必然なんだろうな。  考えてみれば、俺はまだ行ける所が限られている学生だ。旅行も殆ど行かないし、どこそこが懐かしいだとか思う事もあまりない。小学校中学校とか婆ちゃんの家に行って、やっと懐かしさを感じる程度だ。  正直、懐かしいって気持ちもまだあまり判らない。  だけど、大人ってのは俺の倍以上生きて、その分色んな物を見てるんだよな。  この世界で冒険する人間なら、もっともっと遠くて広い世界を沢山見てるんだ。行った場所一つ一つに深い思い出が有るに違いない。  そんな場所がこんな風に廃れていたら、悲しくなっても仕方ないだろう。俺だって、自分の出た小学校が廃校になったら悲しいし。    そう思うとなんだかブラックが可哀想になって、伺うように相手を見上げた。 「……だ、大丈夫か?」  だいじょうぶだぁ、なんつって。  とかいう親戚のオッサンがよくやってた中年くさい返しを期待したのだが、悲しい事にここは異世界。俺が見上げた中年は、目を丸くして数秒固まってしまい。そして何を思ったのか……思いっきり俺に抱き着いてきた。  
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